『バック・トゥ・ザ・ビーチ』
ハーヴェストから2年ぶり、74年に発表されたスタジオ録音の作品。前年にクレイジー・ホースのダニー・ウィットンが死亡してニール自身もそうとう落ち込んだというから、その状態からの回復途上の作品ということになろうか。一般にニールが充電を終えて70年代後半の傑作連発が始まるのは翌年、特にZUMAからと思われがちだが、本作を忘れないでほしい。派手さはないが、繰り返し聴けば聴くほど味が出てくる作品が本作。アコースティックな面もエレクトリックの面(といっても後の轟音路線ではないが)も備え、ハーヴェストまでの音楽を総括し、彼の更なる飛躍の色々な種というか彼の世界の奥深さを確認できる名作である。本作で展開する音楽の多彩さを反映して、バック・ミュージシャンはベン・キース等ストレイゲーターズ系、ビリー・タルボット等クレイジー・ホース系を中心に(両系が共演している曲が多い)、一部の曲にはザ・バンドからリック・ダンコ、レヴォン・ヘルムをゲストに迎えている。ヴォーカル、バンジョー、ドブロだけの曲もある。個人的には、ZUMAの「ドント・クライ・ノー・ティアーズ」の先駆けとなる明るさが魅力の「ウォーク・オン」、穏やかな名曲「アバウト・トゥ・レイン」、抑制されたエレキ・ギターが印象的なタイトル曲、アコースティック・サウンドで静かに締め括るラスト2曲がお薦め。後年、ニールは新しい音を模索するとき「バック・トゥ・ザ・ビーチ」と発言するが、それも頷ける。