これほどおもしろい野球本はないと断言できる。「古田式」の古田とはもちろんヤクルトスワローズの古田敦也捕手だ。日本プロ野球界を代表するキャッチャーである。日本一に輝くこと3度、最優秀選手章2回、首位打者1回、ベストナイン7回、ゴールデングローブ賞8回という華々しい実績の持ち主である。だが古田はいわゆるスター街道を驀進してきた選手ではない。甲子園経験は皆無の予選敗退組で高校時代は無名。大学野球で頭角を現したがドラフト指名はゼロ。待ちかまえる報道陣を前に悔しさをかみしめた経験もある。いわば日陰の道を歩んできた古田は、ノンプロ時代に野茂投手とバッテリーを組んだソウルリンピックで銀メダルを獲得。そして、ヤクルトで知将野村監督に徹底的に鍛えられ、超一流のプレイヤーへと飛躍した。 本書は、熱狂的なヤクルトファンであり、草野球の投手を務める実践派の野球好き、周防正行(映画監督)が古田選手にインタビューしたものだ。インタビューというより気楽な野球談義といった体裁になっているのは、古田の気さくな人柄による。しかし、お気楽風な外見とは異なり、周防の鋭い質問から引き出される古田の話には、興味深いエピソードや選手の本音が含まれていて、思わず膝をうつことしばしばだ。通読すると古田がまるで、周防作品『シコふんじゃった』『Shall we ダンス?』の世界の主人公のような気がしてくる。それくらい「ドラマ」を包含した書物だといえる。(折口ケイ)
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