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佐田 正樹

人間の條件DVD-BOX

『学生時代見た唯一の映画。』
大学4年の頃みた。高潔なヒューマニストである青年梶の思想的挫折、そして近代批判の示唆、これがこの読後の雑感だ。主人公は反戦の社会主義者であり正義感をもったインテリであるが、任務先の炭鉱で想像とは違った炭鉱夫たちの肉欲や親しい人間の背信という現実、つまり人間たちのほどきがたい感情の絡みつきとその崩壊といった、小奇麗な近代ヒューマニズムで一刀両断できない人間関係に直面する。

主人公梶は炭鉱事務から離れ本人も結局は戦争の兵士として戦地へ赴くことになる。
そこでは高潔なはずの主人公が生きるために同胞の首を絞めて殺す、あるいは生意気ではあるが自分についてきた部下が過労死させられ、それに怒った主人公が「昼間なら手が止まっていた」という調子で、チェーンで顔面を徹底的に潰すやりかたで、上官を惨殺する。このように主人公は自分の「ヒューマニストとしての思想」に生きていない状態、つまり思想と生の統合失調状態となり、最後は兵士の異端者として個人的な思いで妻を捜しながら中国大陸を夢遊病者よろしく彷徨い、絶命するのである。

生が剥き出しになる限界状況の設定において「人間であるための最低の条件」とは一体なんなのか、という平時に隠蔽されているものへの根源的な問いを、映画という【虚構】で探索した。したがってこの映画を党派的な反戦や反社会主義等に還元するのはあまりに軽率で、本当は近代主義に覆われた戦後日本捉える極めて重要な実存の映画として解釈されるべきなのではないだろうか。

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